(photo & text Izumi)
コスタリカで見た生き物シリーズ。今回はヘビ編です。ヘビは鳥と比べると探すのが難しい生き物です。まず多くのヘビは夜行性なため、夜の暗い森で探さなければなりません。そして鳥のように鳴いたりしませんので、音を頼りに探すことができません。個体密度も低いので出会える可能性が低いです。今回の旅で運よく「アレンサンゴヘビ」に出会うことができました。
コスタリカのヘビ
コスタリカには約240種の爬虫類(ヘビ・トカゲ類)がいて、そのうち約140種がヘビです。日本のアオダイショウなどが含むまれるナミヘビ科(Colubridae)や日本にはいないマイマイヘビ科(Dipsadidae)のヘビたちで約100種類とその多くを占めます。詳しく知りたい方は「Reptiles of Costa Rica」がおすすめです。電子版の方がお安いみたいですが、私は紙版をパラパラめくるのが好きです。
アレンサンゴヘビ(Allen’s Coralsnake)
コブラ科(Elapidae)サンゴヘビ属(Micrurus)のヘビです。コブラ科のヘビということで、本種も猛毒のヘビです。サンゴヘビの仲間は主に南北アメリカ大陸に生息していて、ぜひコスタリカで見てみたいヘビの一つでした。泊まったネイチャーロッジの現地ガイドによると、最後に見たのは半年前とのこと。とても珍しいので見つけられないと思っていましたが、偶然行った日に森の近くの民家の倒木の下から見つかったということで見に行きました。猛毒ゆえ見つかると駆除されるようですが、写真を撮った後に現地ガイドが救助し、ネイチャーロッジの森に返されました。長生きするといいですね。
サンゴヘビの仲間は色鮮やかなものが多いですが、中でもこのアレンサンゴヘビの模様は一級です。赤(Red), 黄(Amarillo), 黒(Negro)の3色模様が美しく、他の毒をもたないヘビがこのヘビに擬態して身を守ろうとするほどです。3色の頭文字をとって「RAN(走って逃げろ!)」と現地の子供たちは教えられているそうです。尻尾と頭がシュッと細く、目が小さくまん丸いのもかっこいいです。
リングツリーボア(Annulated Tree Boa)
コスタリカの東側(カリブ海側)に生息するボア科ツリーボア属のヘビ。ボア科といえば巨大なヘビアナコンダが有名ですが、本種を含むツリーボア属は名前の通り木の上で過ごす変わったヘビで、アナコンダほどは大きくなりません。樹上で過ごすヘビの体の形は地上のヘビとは少し違います。前項のアレンサンゴヘビは地上性のヘビで、体の断面形状は楕円形で地面と平行な方向にフラット(横長)になっています。対して樹上性のヘビは地面に対して垂直方向な方向にフラット(縦長)になっています。木登りがしやすいボディ形状に進化しました。日本の代表的な樹上性のヘビといえばイワサキセタカヘビですが、こちらも縦長ですね。
リングツリーボアは体にリング模様があるのが特徴です。また他のツリーボアと比べると、すらっとした体つきです。コウモリや寝ている鳥を食べるそうです。NGO の管理する森を夜中歩いているときに出会いました。
マツゲハブ(Eyelash Palm-Pitviper)
ここからは野生のヘビではなく、飼育されているヘビを紹介します。
コンドルを見た宿のオーナが飼育しているヘビを見せてくれました。ここではヘビやカエル、ハチドリを撮影するための野外スタジオが用意されていました。欧米スタイルを感じました。
マツゲハブはクサリヘビ科(Viperidae)ヤシハブ属(Bothriechis)に属するヘビです。クサリヘビの仲間といえば日本ではマムシやハブがいます。毒を持つ仲間です。本種も毒があります。待ち伏せ型のハンターで周囲とまぎれるような体色をしています。色は地域によりさまざまで、草木に隠れるマツゲハブは緑色、ヘリコニアなどの花で待ち伏せするマツゲハブは黄色をしています。他にも茶色のマツゲハブもいるそうです。擬態が上手なこともあって、人との事故もたびたび起こるようです。
緑色のマツゲハブ。よく見ると目の上にマツゲのようなものがあります。
黄色のマツゲハブ
Far-de-Lance
こちらも宿のオーナが飼育していたヘビ。和名はわかりませんでした。クサリヘビ科ヤジリハブ属(Bothrops)のヘビでこちらも毒があります。毒牙は1インチ(25mm)くらいあります。標高が高い地域を除くコスタリカ全土に生息しています。
Hognosed Pitviper
こちらも宿のオーナが飼育していたヘビ。クサリヘビ科Porthidium属のヘビ。東海岸(カリブ海側)に生息し、比較的普通種らしいですが、野外では見られませんでした。こちらも有毒。鼻先がとがっていて上に盛り上がっているところがかわいいです。色が落ち葉そっくりです。
撮影機材
宿のオーナが飼育しているヘビの撮影様子です。
欧米ではこのように生態系を模したスタジオを作って写真撮影を楽しむ方が多いようです。もちろん野生のヘビの写真を撮れれば良いのですが、野外で見つけるのはそう簡単ではありません。今回も野外で出会えたヘビは2種類のみ。観光客的にはこうやってのんびり写真を撮るくらいがちょうどよいかもしれません。
ヘビを撮るときによく使っているのがカゲトリジャンボです。レンズのところにつける白い布のようなもので、ストロボの光をヘビ全体に均一に回すことができます。また万が一ヘビがこちらに向かってきた時のガードにもなります。アレンサンゴヘビを撮った時は真っ暗な夜でしたが、ストロボとカゲトリジャンボのおかげで、きれいな写真が取れました。
撮影機材:Sony a7Ⅳ, SIGMA 24-70mm f2.8, Godox V860Ⅲ, カゲトリジャンボ
旅の手配:さくらツーリスト
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