アンカラナ国立公園の植物
荒々しい石灰岩が並ぶこの地形を歩くと、その独特の環境に適応した植物たちが静かに根付いていました。特に目を引いたのは、逞しく奇妙な姿の「ユーフォルビア・パキポディオイデス (Euphorbia pachypodioides)」です。険しい道のりの中でふと目に入るこれらの植物は、乾いた環境にも強く根を張り、まるでツィンギの守り手のように佇んでいました。アンカラナ国立公園の記事、2回目はハイキング中に見た植物を紹介します。
ベゴニア(Begonia ankaranensis)
ベゴニア・アンカラネンシス (Begonia ankaranensis) は、マダガスカルのアンカラナ特有の植物で、石灰岩質の厳しい環境に適応した珍しいベゴニアです。厚みのある葉と小ぶりの花が特徴で、葉は濃い緑色から抹茶色をしています。白や薄ピンクの花を咲かせ、開花期には岩場に彩りを添えます。
写真のように岩の割れ目から生えている個体を多く見ました。隙間にしっかり根を張っているようです。
ソバカスソウ(Hypoestes phyllostachya)
ヒポエステス・フィロスタキア (Hypoestes phyllostachya) は、マダガスカル原産の植物で、Polka Dot Plant やソバカスソウとして知られています。葉にはピンク、白、赤の斑点があり、観葉植物としてたくさんの園芸品種が作られています。明るい間接光を好みますが、耐陰性もあるため室内でも育てやすい植物です。
このピンクの模様は室内で見ると大変よく目立つ模様ですが、自生地で観察すると、落ち葉の中に紛れて全く目立ちません。隠れることが生存に有利になっているかわかりませんが、見事な保護色になっているように感じました。室内観察ではわからない視点で植物を眺められるのも自生地を訪れる醍醐味ですね。
葉っぱは完全にキツネノマゴ科。葉は対生で長卵形をしています。
ユーフォルビア(Euphorbia pachypodioides)
ユーフォルビア・パキポディオイデス (Euphorbia pachypodioides) は、マダガスカル固有の多肉植物です。茎が膨らんでおり、内部に水分を貯えられるため、乾燥に強いのが特徴です。比較的日当たりの良い箇所に生えている印象でした。
トウダイグサ科ユーフォルビア属の植物ですが、お気づきの通り見た目はマダガスカルを代表する人気植物パキポディウムにそっくりです。種小名も「pachypodi-(パキポディウム)」「-oides(のようなもの)」と名付けられています。ちなみにパキポディウムは「pachy-(太い)」「-podos(足)」の意味です。
着生ラン(Bulbophyllum histrionicum)
マメヅタラン属(Bulbophyllum)は、地上茎の一部が肥大化したバルブを持つのが特徴です。写真中央に写っている黄緑色の塊がバルブです。ここに水分を蓄えて乾季を乗り切ります。2本伸びている茶色の枝のようなものが花序で、もう花は終わってしまったようです。赤い花を咲かせるらしく、見てみたかったです。基本的に木の上に生息しています。
地生ラン(Cynorkis tryphioides)
こちらは先ほどの着生ランとは違って地面に生えているランです。バルブはありませんが、葉が肉厚で乾季を乗り切るだけの備えがありそうでした。ちょうど花の咲き始めで、ピンクの小さい花が少し見られました。この植物について調べても、ほとんど文献が出てきませんでした。あまり知られてないのでしょうか。
ビカクシダ(Platycerium quadridichotomum)
ビカクシダの仲間は世界に18種類ほどいますが、マダガスカルにも分布しています。マダガスカル北西部に生息する本種プラティケリウム・クアドリディコトマムは、胞子葉(下に垂れ下がっている部分)が二又(-dichotomus)になっていて、裂片が4つ(quad-)です。
下の写真の胞子葉のいくつかは、左右から丸まって細い筒状になっています。乾季はこうやって乾燥から身を守るようです。
高い木の上の方に引っ付いていました。風通し抜群で葉が風になびく姿がとてもかっこよかったです。こういうところに生息しているんだなと勉強になりました。
おわりに
ハイキング中に気になった植物をざっと紹介しました。実はもっと多くの植物がいるのですが、ここでは書ききれません。ぜひご自身の足で見つけてみてください。次回は、アンカラナ国立公園で見た鳥、ヘビ類を紹介したいと思います。またね。
撮影機材:Sony α7 IV, SIGMA 24-70mm F2.8
現像ソフト:Adobe Lightroom
旅の手配:ARICS TOURS 黒川さん
観察時期:2024年1月
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